幼稚園の入園をきっかけに、場面緘黙症が発症した我が家。病院や相談窓口、あちこち足を運んだものの母が望む対応は受けられませんでした。
現在は小学4年生。望む支援が受けられなかった我が家の現状について。
気づけば、シリーズ化してましった。
場面緘黙シリーズ第3回目になる今回は、「場面緘黙症の対応ってどうすればいい? 我が家の対応編」についてお話します。
場面緘黙症って専門家も少なく、この薬を飲めば解決、こんな対応をすれば ばっちりと明確な手引きがあるわけでもありません。
発症の原因も人それぞれですし、専門家だけでも解決しない。そもそも、専門医にめぐり合えることはマレなのかもしれません。
ですので、我が家の経験を含め いろんなケースを参考にして、その子にあったサポートを模索する手がかりになればと思います。
もくじ
場面緘黙症の対応ってどうすればいい? 基本の5つの対応
特別支援教育の対象となる子どもの障害の中でも、まだ十分な対策が講じられていない「場面緘黙」。
場面緘黙について、以前に比べれば じょじょに認知が広がりつつあるもののまだまだ知られていないのが現状です。場面緘黙の研究は少なく、具体的な治療や支援の方法も確立されていません。
- 病院にかかりたくても、予約いっぱいでなかなか かかれない
- やっとの思いで受診できても、数分で診察終わり
- 診断はついたものの、親が望む対応はしてもらえない
- 場面緘黙に関する、書籍を読んでみても、高い、分厚い、意味わかんない
⇒ 支援例が大変すぎて、やれる気がしない
と壁にぶつかりまくりの私が どのようにして日々を過ごしているのか?
さまざまな情報のまとめや私の体験から、同じ悩みを抱える方の参考になればと思います。
以下、我が家の「基本の5つ対応」です。
- 早期発見をする
- 親をはじめ、学校やお友達 周りに場面緘黙を知ってもらい理解を求める
- 無理強いさせない
- 不安を取り除き、安心な環境を作る
- 自信をつけて、少しずつできることを増やしていく ← 今ここ
不安な環境を取り除き、安心から自信へエネルギーをためて「いつか話せるようなってくれ~!」
という状況でございます。
「いつか、話せるようになったよ」と報告ができることを信じて。
では、その根拠や理由について詳しくみていきます。
基本1. 早期発見・支援が大切な理由
- かつては、家庭で話せているから大丈夫と思われ、「成長したら自然に治る」と放っておかれることが多かったのですが、支援がなければ、緘黙症状を引きずったまま大人になってしまう可能性もあります。
- 授業中に発言できず、友達や先生との会話に加われないことが続くと、自己評価の低下に繋がりやすく、いじめの対象になることも。
- また、うつや社会不安、登校拒否などの二次的な問題が生じやすくなります。
- 何よりも、生きていく上で重要な、社会性やコミュニケーションスキルを身につける機会を逃してしまいます。
それ故に、早期発見・支援が非常に大切といえるでしょう。
自力で克服する子もいますが、何もせずに自然に治るケースは殆どありません。「本人の努力」と「ラッキーな環境」とのタイミングが偶然うまくいったと考えた方がよいでしょう。
出典:LEDEX 場面緘黙(ばめんかんもく)の子どもへの理解と対応 (第1回)場面緘黙って何?
早期発見・支援が大切な理由について、場面緘黙の子を持つ親の私が 個人的にとても参考になった (共感できた) と感じた LEDEX さんのサイトより引用してみました。
早期発見については、「家では普通に話しているのに、学校では一言も話せない。」という場面緘黙 特有の症状から、学校の先生に指摘されて はじめて親御さんが気づくというケースもあるようです。
親は常に、子どもの変化やSOSのサインにアンテナをはりたいですね。
早期発見、支援の必要性について、私の経験を通して思うことについて、いくつか書いてみたいと思います。
1. 周りへの認知と理解の大切さ
「話さないんじゃない。話したいのに話せない子ども」に対して、心ない言葉をかけられるのが一番シンドイです。
場面緘黙を知らないがゆえに、
・親や教師を含めた 大人からの叱責、誤解
・友達からの からかい等から二次障害へ
いじめや不登校、自信喪失につながることを避けたいです。
⇢ ここは、親の働きかけである程度は防げると思っています
場面緘黙症について日本では情報が乏しく10年ほど前まで、教育関係者や医療関係者にもあまり知られていなかったようです。
「そう言えば、あの子大人しかったよね。クラスでは、全然しゃべらなかったよね。」と思い出す方もいるのではないでしょうか?
大人になってから、「自分自身が場面緘黙だったんだ」と知ったという人のリアルな声には。
「先生からの叱責や 友だちからのいじめで苦しんだ、今も心に深く傷を追っている」ってケースがたくさん書かれています。
知らないって、怖いです。 気合い、根性、努力的な時代背景もあったと思います。
たとえば、高所恐怖症の人に「甘えてないで、気合で克服しろっ!」ってキツイよね。
その子の困り感を理解して、周りに知ってもらうことが大切だと思います。
Episode 本人はどう感じているのか?
4年生のはじめ、通級に向かう車の中での次男との会話。
母的には、長年担当の通級の先生も変わったし、担任の先生もかわったし (今年は、みんな男の先生だぜ。気分も新たに、話せるように進歩したい!) という母の決意を固めながら。
「通級の先生とは普通に話せるようになろう。意識を変えよう!」的な話をしました。
すると、次男が一言。
「なんで、話せなくなったんだろね?」
(えっ、そんな感覚? 自分でも疑問形? 意外にドライ?)
母 :今まで、幼稚園のときとかに何か嫌なことあった?
何か言われたりした?
次男:別に。そんなのあるわけないじゃん。(バッカじゃないの?くらいな雰囲気)
次男の本心は、わからない・・。
嫌な記憶を隠しているのか? 覚えていないのか?
きっかけとなる出来事があったのか? なかったのか?
母 :ママの親戚にも。子どもの頃、お兄ちゃんに何気なくいわれた一言が気になって、学校にも行けなくなった子がいるんだ。
でも、その子も大人になって普通にやれてるよ。 だから、次男も大丈夫だよ。 (次男も頑張れ!と言う思いをこめて、親戚の話をしてみた)
少し間があった。
次男はどう受け止めたのだろう?
その後、次男の口からこんな話がでた。
学校での自己紹介の今年の目標に、「今年は、話せるようになる。」って書けばよかった・・。
心の中で、母 じぃ~ん とくる。
「なんで、話せないのか自分でもわからない」 緘黙の子たちの口からよく出る言葉。
なんでだろね? ほんとは、話したいんだよね。
「自分でも話したくて、話そうとすると 喉の奥がきゅ〜と締め付けられる感じで声がでない」と、どこかに書いてあった。
「話したいのに、話せない。」
当事者のそんな気持ちを知ったら、「非難をしたり、気持ちの問題だよ!根性みせろ。」は かわいそうだよね。
2. 社会性やコミュニケーションスキルを身につける機会の損失
我が家の次男は、年少さんから場面緘黙とのお付き合いです。
園児と言えば、遊びや 先生、お友達との会話の中で、人とのかかわり方、コミュニケーションスキルを獲得していく大切な時期です。
社会性という意味では、
自己主張なども出てきて、友達同士ぶつかり合い喧嘩したり、ゆずったり譲られたりを覚える。
どうしたら、友達の輪に入れるか? 経験を通して、人との付き合い方を覚える。自分の思いをうまく言葉にできなくて癇癪おこしたり、なんて時期でもありますね。
言葉を覚えて、社会性やコミュニケーションスキルを育む、人間形成の大切な時期です。
想像してみてください。
自分のことしか見えなかった赤ちゃんの世界から集団生活へ。自分から周囲へ 興味、関心が広がる時期。こんな成長する時期に、先生ともお友達ともお話ができない損失、代償って・・?
お友達との活動の中で もまれながら、楽しい悔しい、成功や失敗を重ねながら、達成感や小さな自信、我慢、抑制することを覚えていく。
そういった小さな自信の積み重ねが 新しい環境やできごとに遭遇したときに、やってみようとチャレンジしていく勇気につながる。
だけど、そういった活動をいつも不安と緊張を感じながら なんとか参加していた次男。楽しくなければ、やりたくないし、また やろうと思えない。やったことなければ、余計 不安にもなる。
気づけば、一年生の頃の次男は、恐ろしく自己肯定感の低いというか、自信のない子でした。
「どうせできない、無理に決まってる。」って言うのが、低学年の頃の次男の口癖せでしたね。
経験が伴わなければ、中身はいつまでも子ども Baby のまま、幼さが残ってしまいます。
外見は成長するけど、中身が追いつかないと 歳相応の対応を求められても できないことへの自己肯定感のなさ。周りと協調できない。等、二次障害へ繋がっていってしまいます。
3. 語彙を広げる、読み書きの基盤をつくる時期を逃さないように
言葉の発達の面からみると、
「あ~あ、う~」などの喃語からはじまりじょじょに言葉を覚えてきたBaby たちが、4、5歳の年少さんの頃になると「話す意欲が高まり、友達同士でも会話を楽しむ時期」になります。
友達との会話を通して、言葉数や表現の仕方が増える時期です。
身近な人、お友達や親・兄弟、テレビの影響をうけて、どんどん語彙力も増えて行きます。いい言葉、悪い言葉 色々覚えてきます。真似してほしくない言葉をたくさん言う時期です。
現在、年長さんの娘は、春日部に住むあの子の物マネばかりです・・(汗)
そして、年長さんともなれば小学生に向けて、読み書きを覚えはじめる時期でもあります。
発達の順序として、「聞く、話す」から発達して その基盤があるから「読む、書く」に発展します。
「読み書きは、見て書いてだから 聞く話すは関係ないじゃん?」って思われがちですが、文字には音がくっついてるんです。「読み = 音」がわからなければ読めません。
人は耳から音を聞いて口で真似て、それを認めてもらいながら意味とつなげて言語を習得していきます。文字をみたときに、音の想起、言葉との関連付けができなければ書けないんです。
だから、言葉を発する機会が少ないってことは、周りに比べて語彙を身につける機会、練習量が圧倒的に減ることになります。
そういう意味からすると、会話上手な子は、一般的に読み書きを覚えるのも早いようです。
こんな大切な3年間。お友達とほぼ会話してこなかった次男は、やっぱり、読み書きが苦手です。
もともと、乳児のときから 副鼻腔炎などもあり音の聞き取りがよくなかったせいもあるのかな~? 集中力の問題もあるよねぇ。まぁ、読み書きが苦手な原因はいろんな要因があるのでしょうが。
緘黙であったことの影響は、少なからずともあるように思います。
そんなわけで、
園児の3年間、言葉の発達期にコミュニケーション不足だった次男は、語彙力も少ないですし、人との関わり方がどこか幼さがあるように思いました。自分勝手さとか、わがままとかね。
Episode オンラインゲームも悪くない
3年生頃の次男 と 年中の妹との会話を聞くと、「こいつら、色んな意味で同レベルだな」と(汗)
今まで、コミュニケーションが不足していた次男は、妹との会話を通じて「今、遅れて会話や人とのかかわり方を習得しているのかな~」と思えました。
ちょうどよく、同レベルだった妹との会話で、少し会話量が増えた次男。
その後は フォートナイト (オンラインゲーム) で、ヘッドセットのマイク越しに仲良しの友だちと話すようになりました。オンラインなら視線は感じないものね。
(ここ、視線を恐怖に感じる緘黙の子には大きなポイントですよ)
ゲームを介して、兄との会話量も増えました。
ちなみに、コロナががきっかけでオンラインに切り替わった英会話。
次男は年長さんのときから、英会話をはじめているのですが。
教室で先生に対面で会うと 聞こえるか聞こえないかくらいの声でポソポソとしか話せないのに、オンラインでは うるさいくらい大きな声で話しています?!
視線を感じないって、素晴らしい!
少しずつ、発達していきました。
Episode 漫画だっていいんです
現在、4年生になり、以前に比べて 言葉数の増えた次男は、ここ最近 漫画に興味を持つようになりました。
今までは、兄のコロコロコミックにいっさい、興味をしめさなかったのに(苦笑) ゲームの攻略本にもやっと手がのびてきました(笑)
漫画といえど、活字を読むようになりました。
「漫画だっていいんです。」
興味をもったところから自主的に活字に触れていくのは、無理やり教え込むより はるかに近道になります。
会話量に比例して、苦手な読み書きも、少しずつ前進しているようにも思えます。
コミュニケーションの機会が少なくなりがちな、小さな緘黙ちゃんは、
ぜひ 家庭では「親子のコミュケーションをたくさんとって欲しい」と思います。
緘黙が固定化する前に
そして、早期発見が大切な理由の最後に。
周囲に「話さない子」としてのキャラクターが定着すると、今度は「話したら変に思われる」と周囲の反応が気になるように・・。
そのため、話しだすのに「何倍もの勇気と努力」が必要になるのです。
緘黙あるあるですが、「小学生(中学生) の間は話さないと決めている子」が多いと聞きます。
環境にも慣れてきて、「頑張れば話せそうな気もするけど、周りの環境が変わるまでは このままでいよう。」
そんな背景には、「今まで、ずっと話さないできたのに。急に、話したら変に思われる」といった心理が働くようです。
そもそも、本人が「話そう、変わろう!」という気がなければ、いくら周りがフォローしても話せるようにはなりません。
緘黙が固定化する前に、早期発見・支援をすることが重要です。
まとめ
園児のときの 人との付き合い方って、とても大切です。人生の基盤となります。
園児のときに、たくさん褒めて自信をつけさせてあげることで、苦手なことにも挑戦できるようにさせてあげたいです。
それが、「場面緘黙症 克服への基本の対応」となります。(早いうちが一番ですが、気づいたその時からでも遅くはありません。)
それが、比較的 簡単にできるのが小さいときなのです。
「友達の輪にうまく入れない。」
園児ならば、親や先生が一緒に付き添ったり、口添えしてあげて入るのもありですが。
小学生になって、親が一緒に「い〜れ〜て!」っておかしいよね。逆に入れてくれないよ。
思春期の子に、褒めておだてて その気にさせようと思っても。「バカじゃないの?」と冷めた目で見られるのがオチです。
小さいうちなら、おだてたら おだてただけ ドヤ顔でやってくれます(笑)
クールに見せてる子どもでも、褒められまくると影ではうれしくて「やった!やった!」と縦ゆれしています(笑)
かわいいです。まだ、素直ですから。
そして、周りのお友達も「この子は、お話しない子なんだね。」と比較的すんなりと 子どもなりに状況を受け入れてくれます。
小さいうちのほうが、支援しやすい面もあると思います。
⇒ 早期発見・支援が大切
Episode はじめての友達
次男が一年生の頃、
他校の通級指導へ通わせるため、学校へ次男をお迎えに行くと。同じクラスの人懐っこい男の子が私のところへやってきて・・。
男の子:「あ~! 次男くんのママだ! ママだ! どこ行くの?」
母 :「お話できるように、通級にいくんだよ」
男の子:
「早く、話せるようになるといいね。」
母、感動・・(╥_╥)一年生って、まだ純粋なんだな。と当時はとても心に響きました。
ちなみに、その時 声をかけてくれた子は、その後「次男にできた初めてのお友達」となりました。 放課後も遊ぶ仲になり、話せるお友達の第一号となりました。
低学年くらいまでの子どもって、自分のことはさておき 人のお世話をやきたがる子が多いです(笑)
そんな子の協力をうまく利用できると、クラスのみんなも協力的で 雰囲気も比較的よくなりがちだなと思いました。良いお友達に助けられて、次男はここまでやってこられています。
みんな、ありがとう。
だから、園児、低学年のうちになんとかしたい。早期発見、支援をしたい。
親や教師、支援者が介入しやすいのは幼少期。
思春期が絡んでくると難しくなる。自分の子だけでなく、周りの子も難しい時期なので。
早期発見することで、
「親の働きかけで、二次障害へのリスクは減らせる」と思います。
次回は、「場面緘黙症の対応ってどうすればいい? 失敗例と成功例」へ続きます。
◆先生方の理解を得るために、愛用している本 なっちゃんの声 学校で話せない子どもたちの理解のために [ はやしみこ ] |
コメント
Comments are closed.